ジェット旅客機 DC−10 JA8530のRCモデル

ジェット旅客機RCモデル DC10

先日、古い写真集を整理していたら、30年ほど前に製作した旅客機のラジコンスケールモデルの写真が出てきた。
 当時日本の空を飛んでいた大量輸送時代の花形-エヤバス機 マクドネルダグラスDC10である。
後ろにビヤダルのようなジェットエンジンを搭載した3発ジェット旅客機である。

 70年代後半に登場した初代ワイドボディジェット旅客機である。ジャンボ旅客機に次いで300人乗りを実現するためには当時のジェットエンジン出力からは3機搭載が必要であった。
それとIATAの運行規制で大洋を横断するには双発機では無理という理由もあった。現在ではエンジンのパワーアップの技術革新、信頼性の向上があり、当時の出力20トンクラスの約2倍の出力で一機あたり40トンを超えるものまで現れたので双発機が主流となってしまった。
 双発機になると外観デザインは画一化され、どの機体をみても同じに見えてバリエーションに乏しく、われわれ航空マニアにはある意味魅力が無くなってしまったともいえる。
 それに比較すると当時のジェット旅客機はリアエンジン、双発、3発、4発とバリエーションがたくさんあり、それなりに空港で見かける旅客機のスタイルが楽しめた。


 なかでも、このDC10とロッキードL1011トライスターは3発機として3発目エンジンをどう搭載するかで、多いに話題となり、良きライバルとなった。 
 ロッキードは尾部エンジンをS字ダクトで機体の軸線とスラストラインを一致させた。しかし、S字ダクトの流入損失とダクト内の流入失速乱流が懸念された。 マクドネルダグラスDC10は尾部エンジンをダイレクトに垂直尾翼に取り付けた構造を採用したがラダー面積の不足、推力ラインのズレなどが 懸念され、どちらも一長一短のエンジン配置であった。
マクドネルダグラス DC10(By Wiki.)
ロッキードL1011トライスター(By Lockheed Web)
 当時、筆者がすんでいた奈良斑鳩 法隆寺町は伊丹空港への着陸侵入コースにあたり、かなり低い高度で旅客機が大きく良く見えた。
なかでも、DC10のスタイルは印象的でその姿をラジコンモデルにしてみたのである。
 ラジコンモデルにするにしても、当時はまだ電動機は非力で使い物にならず、、、もっとも現在見たいにLi-Poバッテリーとブラシレスモーター
、強力なダクテッドファンなどは無論出現していなかった。
考えた挙句思いついたのが、、、プロペラ駆動グローエンジンを尾部のジェットエンジン部に一発搭載するアイデアである。

燃料タンクもエンジンの直後に設置しているので重心位置は後方になり、主翼空力中心も後になり、丁度、後退翼ジェット旅客機のスタイルを実現するにも都合が良かった。ただ、プロペラの直径を満足させると、エンジン位置はかなり、上になり、スケール感を損なうので、胴体の一部を切り欠き、そこをプロペラの回転面を通過させるアイデアを思いついた。プロペラ回転面の一部は胴体に阻害されるが、70%ほどは確保できるので思い切って、採用した。実際飛ばせてみるとそんなに効率ダウンは感じなかった。
 主翼下の2つのジェットエンジンはダミーとなるが、、、、双発エンジンの出力調整や、エンジントラブルを回避でき、
翼面荷重も低く出来るので、ラジコン飛行機としては扱いやすいサイズに出来るのである。
車輪もノーズがダブル、メインが4輪ボギーをこだわって再現している。(実際のDC10にはなんと胴体中央部にもダブルの車輪が存在した)
 胴体は非力なグローエンジンの推力を考慮して、スケール感を損なわない範囲で断面円をすこし小さく設定した。
胴体構造はベニア板の円形フレームに3mm角バルサ材のロンジロン構造、それに1mmバルサ板を貼り付けた実機同様の
 セミモノコック構造である。
機首部と尾部の流線型絞込みラインは1mm厚のバルサ板を短冊貼りして仕上げている。

 機首の窓の形状は大変苦労した記憶がある。しかし、その6枚風防ガラスは実機の特徴なので何度も作り変えた。
主翼は2段後退角の特徴をそのまま再現し、独自のフラットボトム翼型を設計した。スケール感を損なわないよう少しアスペクト比を大きくして、フラップを装備しなくても良いようにした。
 この主翼の形は当時のラジコン飛行機モデルには使われていない平面形であった。もちろん当時にジェット旅客機のスケールキットなど無論、無かったが。水平尾翼にも当時のジェット旅客機はオールフライング(全動翼)化が主流であったので、すかさずこのモデルもオールフライング形式として再現した。

 主翼からつるしたダミーのジェットエンジンは抵抗を少なくするために風が通り抜けるよう”筒抜け状態”にしている。
デスクトップモデルなら、こんな空力計算は必要ではないが、、大気の中を飛ばすためには、綿密な空力計算が必要となり、
 ましてや、、スケール感を伴うと、さらにその空力アレンジは複雑になってしまう。
JALの社名や機番、尾翼の”鶴丸マーク”などはすべて、カッターナイフを使った切り抜き文字である。
 こうして、誕生したDC-10のラジコン飛行機モデルは実際に飛行させることが出来た。当時の飛行時の画像がないのが残念である。
ただ、上空での水平飛行は問題がなかったが、、、、離着陸の場合は大変難しく、パワー操作にコツが必要であった。
 それは、尾部エンジン特有のパワーアップすると頭下げになるという現象であった。 尾部のしかも主翼の基準ラインからははるかに上に推力ラインが
あるので、推力モーメントの変動が即、主翼の迎え角に作用し、揚力変動につながり、ピッチバランス制御がむづかしくなるのである。

特に着陸時のバックサイドオペレーション時(速度落とすために向え角を大きくすると抵抗が大きくなるため推力をアップ)
にはパワー操作により、ピッチ変動が過大となり、PIOに陥る。
 最終的に、着陸進入時にはエンジンパワーの変動を最小に押さえ、スムースにファイナルターンをこなし、ほぼグライディング状態で
滑走路に滑りこませるワザを使用することになった。
 ちなみにモデルに記入しているこの機体番号JA8530をWEBで調べてみると、、、なんと実際に存在した日本航空の番号であった。
下記はそのリンクです。(航空フォトグラファーIto Noriyuki氏のサイトAirplane Airplane Airplaneにリンク)
http://www2s.biglobe.ne.jp/ito-nori/week/weeklyfj89.html

このJA8530を大阪伊丹空港で見かけたか、、はたまた、、法隆寺の上を飛んでる姿をみかけたのかは思い出せないが、、、
 30年の時を越えて、、このセピア色のカラー画像は当時のDC-10モデルへの思い入れが蘇ってくる。