” ”オスプレイ” その空力的問題と弱点

 このところ、O県やY県配備に絡み、墜落事故でマスコミ露出度の高い最新鋭米国垂直離着陸機”オスプレイ”について、
空力的視点で分析してみよう。 by wiki
というのも、謀地方県の感情をむやみやたらに駆り立てるマスコミの真の原因に基づく報道が
あまりにもなさすぎな現実を見るにつけ、その表面的な情報による一方的欠陥機説にたいして、航空マニアとしてその非科学的報道にいささか違和感を
禁じえない状況にあるので、空力学視点で客観的に解説してみたい。

 短い主翼の両端に大きなエンジンと大きなプロペラ、飛行機のようで?ヘリコプター?でもない
この機体は極めて異様に見える。しかし、この形態こそ垂直に飛び上がり、高速で移動する
人類が描いた理想の航空機の形態の一つである。
 垂直に離着陸できるヘリコプターは前進速度に限界があり、そのトップスピードは時速約370km前後が
限度である。その制約は水平に回転する回転翼にある。すなわち前進側の回転翼のスピードは音速に近づき、
衝撃波失速を起こし揚力が不安定な状態になる。一方後退側の回転翼は前進スピードに相殺され、対気スピードは
ゼロに近づき、失速状態になる。結果、空中に留まることが不可能になり、墜落する。

 一方固定翼航空機は垂直に離着陸することは言わずもがな不可能である。
 この両者の欠点を互いに補う形で1950年代より各国で追求されたのがヘリと固定翼航空機の”コンバーチブル(複合型)プレーンである。  米国では回転翼ヘリコプターを改造した実験機が作られテストされた。
画像は初期のベル社のXV-3。From Wikipedia
by nasa(画)
ベル47ヘリコプターの回転翼などの部品を使っている。ベル特有の安定棒を持つローターが見える。重く出力の低いレシプロピストンエンジン搭載。
このほかにも様々はものが作られたが実験機の域を出なかった。
 原因は姿勢制御の課題がおおく、多くが人力に頼る?人の五感制御であったり、回転翼の構造も関節型で頻繁に可動する水力推力転換に
耐えれる構造でなかった。また当時はアルミ合金が主体であり、機体重量も実用域にたどり着けるものではなかった。
 70年台に入り、制御工学ではマイクロコンピューターの開発、小型軽量の姿勢制御用ジャイロの開発、コンパクトで高出力な
ターボプロップエンジンの開発、リジットローター回転翼技術、カーボンやアラミド
などの先進複合材料の開発などアポロ計画がもたらした種々の航空技術革新は”鳴かず飛ばず”状態にあったVTOL機にとって再び開発の好機が到来した。
 ヘリコプター盟主のベルは再び、コンバーチブルプレーン”チルトローター機の開発に取り掛かった。
チルトローターと呼ぶ推力方向変換型のXV15実験機である。 by nasa
by nasa。(画)
 XV15は両翼端にターボプロップエンジンを搭載し、これを回転可動することでプロペラの推力を垂直から水平までスムーズに変更して、VTOL飛行を可能とした。 ヘリコプターにしてはアスペクト比の大きな幅広のローターを持つ。スピンナーが大きくローターの付け根が分厚いのはヘリコプター特有のプロペラのサイクリックピッチ変更機構を内蔵しているためである。しかもローターハブの付け根が分厚いのは高速高荷重回転するローターにかかる強大な曲げ応力と90度推力変更するためのジャイロプリセッション変形モーメントに耐える力学的要因から来ている。
 by Wiki.

水平飛行中は左右のロータをエンジンナセルごと90度回転させて普通のターボプロップ機となり、時速600km前後で飛行する。
 固定翼飛行機にしては異様に主翼が小さく、左右のプロペラがやたら大きく違和感を感じるであろう。
XV15は固定翼飛行機としてそのままのスタイルでは水平に離着陸は不可能である。主翼の面積が離着陸に必要な揚力を発生する面積に足りないためである。主翼は左右のエンジンを支える役目も持つのでヘリコプターモードの時には大きくては空力的に大変邪魔になる。したがって、時速200km以上の水平飛行域で有効な揚力を発生できるように面積を意図的に小さくしている。また水平状態のままでは大きなローターは地面をたたいてしまうため本質的に不可能なのだ。
(画)
 V22は比較的順調に開発が進み、実験域を脱出して、現在の軍事用オスプレイ開発につながった。
米国が軍事用でこのチルトローター機の開発と配備に躍起になっているのは過去の軍事作戦の大きな失敗があるからである。
 1980年イラン革命で米国大使館に閉じ込められ人質となった大使館員とその家族の救出作戦(イーグルクロー作戦)を実行した。
使用したのは米国海兵隊の大型ヘリコプターRH53Dシースタリオンに特殊部隊デルタフォースを載せ直接大使館屋上に着陸して救出する作戦であった。 by wiki.

 ところが集結場所の砂漠で砂嵐と砂塵による視界不良が原因の墜落と衝突事故で3機のヘリと多くの隊員を失って作戦は失敗におわり、時のカーター政権は退陣に追い込まれた。
このとき、このV22オスプレイのような、高速移動とVTOL能力を持った軍用機があれば、砂嵐をさけた作戦がたてられ、救出作戦が成功した可能性が極めて高い。 まさに軍用機としては大変有用な能力を持つ機体である。

現在マスコミでV22オスプレイの多発する事故が欠陥機と騒がれているが、実際にどのような欠陥があるのかどのTV局も詳しく報道していない。もっともこのところの不景気がたたる日本の経済状況にあってはTV局各社もコスト安の
バラエティ番組やお隣の反流番組を流すのが精一杯で真実を伝えるため予算が削減されているのはまことに痛ましい光景であるが、、、、。
最もデリケートな政治状況なので、米国も詳細な事故原因をさらけ出したく無い状態にある。
 これまでに知られている事故原因は組み立て上の配線ミス(youtubeの事故動画の原因はこれ)、初歩的な操縦ミス、コントロールプログラムの不備、整備ミス、運行上の判断ミスなど、、、、、
これまでの航空機には付き物の原因が挙げられているが、、、、本質に突っ込んだ空力的視点での解説がとぼしいのは非常に残念である。
 そこで機体の構造に起因する空力的原因と運用上の宿命からくる原因とが合わさって起きるV22オスプレイが起こす事故の原因の一つを
空力的に解説してみよう。
第1の決定的空力的弱点は飛行機モードで着陸が不可能なことである。
 垂直離着陸の回転翼揚力を確保するための巨大なプロップローターがそうさせている。
飛行機モードでは左右のプロペラが地面をはたいてしまう。
つまり、圧倒的飛行時間の長い水平飛行中にエンジン停止を起こした場合、片方だけのエンジン停止ならば
左右のエンジンは別系統のプロペラシャフトでつながっているため、バックアップが可能だが、問題は
 両方のエンジンが一度に停止した場合は最悪事態が予測できる。
それは外観の主翼面積からして飛行機モードとして滑空比が期待できないほどの数値が推測できる。その結果はフラップを下げ、揚力を稼いでも
ほとんど落下状態に近い飛行経路となるだろう。この基本問題を解決するには緊急用パラシュートを装備する以外無いであろう。 米国では小型飛行機には既に数千機が装備して、数例の救助実績があるという。
資金とペイロードを犠牲にすれば、4つくらい装備することで軟着陸となり、犠牲者は減らすことが可能だと思う。
 画像は米国バリスティックリカバリーシステム社が販売している軽飛行機用パラシュート。
 by wiki.
第2はヘリコプターモードではヘリに必要な救世主であるオートローテーション機能(自動回転)が弱いことである。
 この機能は現在のヘリにはエンジン停止時に有効な機能として、安全上必要不可欠である。
ヘリはエンジン可動中はローターのピッチはプラスである。いわば竹とんぼと同じ状態である。
 万一エンジン停止時は即座にローターにピッチをマイナスにして、ローターを滑空状態にして、揚力を
稼ぎ、軟着陸できるのである。

 このときに細長くピッチのひねりの浅い一般的なヘリのローターでは
失速部や減速部に負けない加速域が面積的に十分であり有効である。
 ところがプロペラとローターを兼ねるオスプレイのプロップローターは短く、ひねりの強い翅となっている。これでは加速部の面積が極端に狭く、オートローテーションの連続的回転には不適当である。
 おそらく、低高度なら、多少クッション効果があるにしても、ある程度の高度では、途中で回転が停止し全く用をなさないであろう。

 
第3は ヘリコプターには回転翼特有のボルテックスリングという揚力損失状態が憑き物である。これはへり自身のローターが作り出すダウンウオッシュ(下降気流)と同じ速度で降下すると、ローターの円周端で上面に巻き上がりドーナツ状の回転気流が発生し、これが連続して起きるために急激にローターが揚力を失う現象である。
 昔のベル47のような大きな直径のローターを低回転で回すヘリはダウンウオッシュスピードも遅く、降下スピードによってはボルテックスリングに陥りやすい性質があった。
これはヘリコプターのマニュアルには禁止飛行域として明記されている。現在のへりではこれを避けるため、ローター直径を小さくして回転を高めに設定して、ダウンウオッシュスピードをあげ、飛行禁止降下速度域を狭めている。
 V22オスプレイは大きな幅広で分厚いロータを使っているので回転速度も遅くこのボルテックスリングを発生しやすい。

また機体構造もエンジンナセルを支える水平飛行用の主翼も垂直飛行モード時のダウンウオッシュ速度をさらに低くする原因となっている。
 すなわち、ローターのダウンウオッシュはこの下面に広がる主翼に邪魔されて、ダウンウオッシュ気流は乱されて、速度は低下し、ボルテックスリングを
発生しやすい降下スピード域に陥りやすくなる。

 運用面に起因する事故原因として、V22は特殊作戦用として任務が割り当てられるため、その飛行パターンもVTOL機の運用限界ぎりぎりの高速進入、急減速、高降下率運用が当たり前となっている。それは特殊作戦上さけられない宿命である。特殊作戦で敵中のターゲットにピンポイントで着陸するためには
浅い降下率、低い速度でうろうろ飛行していては対空砲火やミサイルはおろか、RPG7のようなゲリラ兵が持つ無誘導ロケット砲でも打ち落とせるカッコウの餌食となってしまう。
 図は特殊作戦時の飛行パターン例を指す.

赤いゾーンは危険なボルテックスリングを誘発する飛行ゾーンである。
対空砲火を避けるため500km前後のスピードで飛行してきたV22はピンポイントターゲットを急襲するため、急減速降下 急旋回でターゲットに進入する。
 この時、旋廻降下円の内側のローターでは極めて危険なボルテックスリングを発生しやすい空力状態となっている。しかも主翼は揚力を発生しない速度域となっているため頼りにならない。


第4は運用面でパイロットの資質と慣熟面でも問題を抱えている。
 V22オスプレイのような垂直系の機動を持つ新型機ではでは水平系機動の固定翼機経験パイロットより、回転翼機パイロットを転換訓練したほうが近道である。
過去にも英国のAV8A-ハリヤーVTOL戦闘機でも初期のころはヘリパイロットを転換訓練し成功した例がある。いくらコンピュータ安定制御が進んでも
それほどに垂直系の飛行では操縦に感覚的慣熟が必要とされる。 ところが最近のへりは前述のようにボルテックスリングの速度域を狭くする
設計となっている。したがって、つい慣れたヘリのような飛行パターンで降下してしまうとV22オスプレイの場合、ボルテックスリング域に入ってしまうことに陥りやすい。
 
 しかしながら、航空機マニアとして、このV22オスプレイの欠点を”赤子”のように指を咥えて見ているわけにも行かないので
空力的改善方法を提案しよう。
 その方法として、ヘリ飛行モードでのダウンウオッシュスピードを上げる方法を提案しよう。
V22はヘリモードではエンジンを支える支柱以外に役をなさない主翼は下降気流を乱し、邪魔者となっている。主翼後縁にはシングルフラップがあり、
 ヘリモード時には45度以上にさげて、抵抗を低くするようにしている。筆者の提案はこのフラップに”USB”装置を取り付ける改造を提案する。
航空技術に詳しくない読者諸君は”USB”と聞いて、パソコンの端末コネクターを使ってどうするんだい?!と疑念をいだくと思うが、この場合は
USB=Upper Surface Blowingの略表現である。最新航空テクノジーに詳しい読者はぴいいんーん!!とくるであろう!。 つまり、V22のシングルフラップ上面に高圧の空気流を流して乱流域を整流し、ダウンウオッシュ速度を上げることでボルテックスリングの発生を抑えるアイデアであーる。加えて、前縁は現在固定であるがここにクルーガーフラップを改造装備して、これにも上面に高圧の空気流を流して、ヘリモード時のダウンウオッシュスピードを上げることに貢献させるアイデアである。
 もちろんこの高圧空気流の供給源は小型のガスタービンを装備する必要があり、重量増加のマイナス点はあるが、搭載兵員の3〜5名分をへらしても
安全性には変えられないと考える。
 このブログの常連の皆さんのような賢い!読者は非科学的で論拠なき報道を絶え間なく興味本位に繰り返し、いたづらに関係諸県の住民を不安!に落とし入れる報道各社の被害妄想的扇動に迷わされることはないと筆者はかんがえるが、、、、、。
 V22オスプレイのような新しい有益な航空機は工夫と知恵を持ち寄り、りっぱな航空機にそだてあげようではありませーんか。何せ、軍用航空機とはいえ、われわれ人類の見果てぬ夢!の産物なのですから。
 また、今後にもチルトローター民間型への発展導入が予定されていることもあり、悪いイメージが人々に植えつけられるのは全く持って不利益とつながりかねない。
 画像はイタリア、アグスタ社が開発中の民間型チルトウイング機

by Dmitry Mottl
 
 それにしても、、なによりもV22のような戦術上有効な機体をどんどん日本国内に配備運用して、最近富みに日本の周辺海域にカッパ、、、ツ(あの可愛いカッパではない!)に侵出鬼没している大国小国に睨みを
効かせてほしいと思う。