ホバーQ登場

skyex2008-11-03


プロフィール


skyex

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見果てぬ夢を形にするスドリームデザイナーIt is Sdream Designer in shape as for the faraway dream. :yoichi takahashi

 この間知り合いのIさんより、ホバーQを見せてもらった。Iさんはこのところ、
ラジコンものにはまっているらしく、いろいろと面白いラジコンニュースを私に
紹介してくれている。 ホバーQもIさんより、もうすぐ出ると聞いていたので
期待していた。聞くところによると、操縦がかなりむつかしく直進させるのが
ひと苦労するらしい。良かったら貸してあげますよ、というので借りることにした。
 筆者はホバークラフトに関しては長年研究し、RCモデルも4台ほど作った経験がある。 中でも圧巻なのは京都の石屋さんの依頼で雪上で走るホバークラフトを製作した。新雪の上でホバークラフトの性能を決めるため、全長1.2mほどのグローエンジンで走るラジコンホバークラフトを長野のスキー場まで走らせに行ったり、終いには
250cc、50馬力の水平対抗エンジンを搭載した人の乗れるホバークラフトまで
製作した経験がある。
 ホバークラフトの歴史は1958年にイギリスのソニークラフトが原理を発明し、
1960年代にそれを改良したスカートを持った現在の形式をこれまたイギリスのクリストファーコッカレルが発明した。それをイギリスのファーンボロー航空ショウで”SRN-1”としてを世界に衝撃の初デビューをさせた。SRN-1はイラストでも判るとうり、お盆をさかさまにして、その上にプロペラを内蔵したダクトを抱いたシンプルなスタイルである。このダクトの中には
巨大な航空機用の星型エンジンが鎮座している。ダクトをはじめその巨大な姿はまだ小型高出力のガスタービンエンジンが実用域になかったからである。
しかし、イギリス人はこの様な忍耐と粘り強い技術開発力が得意な人種である。このホーバークラフトはもとより、垂直離着陸機の”ハリヤー”や超音速旅客機の”コンコルド”などいずれも長年の歳月をかけて、当時の”夢の乗り物”を数多く開発してきた。

イギリスではその後軍用や民間用として数多くが開発された。もっとも成功したのはドーバー海峡を横断する巨大なカーフェリーの”SRN-4”である。30台の車両、250人の乗客を乗せ、巨大な船体の上部にターボプロップエンジンで駆動するファンと推進用プロペラを4つタワー上に配置した独特なデザインである。その運行する姿は大変迫力があり、まさに海上のジャンボジェット機を彷彿させるものがあった。
 その後海底ユーロトンネルが開通するとそれにとって変わり、今は博物館に収まっている。日本でも1970年から80年にかけて瀬戸内航路なので数隻が活躍していたが
瀬戸大橋などの開通などで押され流され、廃止された。
 かつて、一斉を風靡した”未来の乗り物”ホバークラフトも現在では運行しているところは世界でも残り少なくなってきている。
 日本で見られるのは大分空港と大分市を結んでいる”大分ホーバーフェリー”が唯一のホバークラフト運行会社であり、ここしか走っていない。
http://www.oitahover.co.jp/
筆者の郷里は大分なので何回か利用したがその走るさまは大変面白い。まず海上に出るまでのS字カーブをドリフトをしながら走る姿は滑稽であるがパイロットの苦労が伺える。おそらく操縦席ではカウンターを当てながら必死にコースをとろうとしているに違いない。それにしても、なぜこの様な高度な操縦が必要なS字カーブを設置したかはなぞが残る。
http://visionmovie.ameba.jp/mcj.php?id=GDs52qg75nW:bhad:No:cb:x..hl.zfjyIOSf7/xmLahdcWOggKJUd:Dx/O:xB:OP:VXJmBQVPDOKNUhckOmiMq/&width=320&height=240&skin=gray">
読者の皆さんも一度、大分にいく機会があればぜひ、この”大分名物”のホバークラフトに乗ってみてほしい!。きっとこれまでの地上の乗り物では体験したことのない”サイドフォース0”の世界を味わっていただきたい!。
 このように世界でも、数少ない運用状態にあるホバークラフトだが、軍用ではまだ活路があり、かつての上陸用舟艇に変わって、海面から、陸地に連続して運行できるホーバークラフトは圧倒的な強みがある。現在”LCAC”と呼ばれる上陸用のホバークラフトが米軍はじめ、英国、日本などで運用されている。しばらくはこれに勝る上陸用運搬手段はそう簡単には出現しないだろう!。

話をホバーQに戻そう。
 このホバーQは以外とシンプルにできている。”へりQ”と違って見た目が簡単そうである。良く見るとプロペラはひとつついている。それにぺしゃんこなスカートがへばりついている。キャビンは透明なキャノピーで覆われ、その中に電子基盤が見えているにがハイテクっぽくていい!。

 この様なプロペラひとつの形式は下図の分類では
Aタイプに分類できる。ひとつのプロペラで浮上用と推進用をかねる形式である。
この方式はエンジンと動力系統がひとつでシンプルにまてめられるメリットがあり、構造も簡単で初期のホバークラフトはこの形式であった。自作のホーバークラフトや小型ホバークラフトには今もこの形式が多い。
ただ、浮上から前進までの段階に節度がないため、浮上即前進といった節操のない運動をする。

これに比べて、Bタイプは浮上が単独で行える。浮上してから、前進運動に入ることが可能で、その場での旋廻も可能だ。現在の旅客用はじめ、実務に供されているホバークラフトはほとんどこのタイプだ。それだけに動力系統は2系統必要だし、エンジンコントロールや操縦システムもそれなりに複雑になる。
 ホバーQはこの分類ではAタイプに属する。おもちゃとしてはシンプルで機構簡単なので必然的にこのタイプになる。

 次にホバークラフトのもっとも重要な機能の浮上システムにいってみよう!。
ホバークラフトの浮上システム形式には大きく分けて、次の3つがある。
1はエヤベアリングタイプ:このタイプは高圧空気を狭い隙間に流しその圧力で浮上する。これは初期のホバークラフトで盛んに研究された。しかしながら浮上高が取れないなどで実用にならなかった。この原理は工作機械のエヤベアリングに現在も使用されている。
2はプレナムチャンバ方式:これも初期には盛んに研究され製作された。固定的に設置された周辺から高圧噴流を
地面に吹き付けるタイプだ。この形式は浮上した場合に向こうの景色がすかせて見えることが当時として
いかにも地上から浮いていることの証明として珍重された。しかし、障害物や地形の凹凸にたいして噴流ノズルを形成する船体が剛体性のため、地面の凹凸に衝突し、船体が変形するなどして追随すること
ができない欠点を持つ。
3は柔軟なスカートを持つ形式でこれにより、初めて地形追随や地上の障害物を乗り越えることが可能になった。
ホバークラフトを現在の実用域に進化させた クリストファーコッカレルの偉大な発明である。

 ホバーQはこの形式ではスカートを持った形式でホバークラフトとしては当たり前ではあるがもっとも
進化した、形式を持っておる。
 このスカート形式もまた3種類ほどある。 いやはや学問とは奥の深いものである。

1、はフィンガースカートと呼ばれる形式で一つ一つのスカートがセルと呼ばれ、側壁の布で完全に独立している。見た目が指を重ねたように見えるためについた名前である。
そのため、万一ひとつのセルが破損しても大破につながらない。また、フィンガーの間はセパレートなのでその間を障害物がすり抜けても浮上性能に影響はなく地形追随性に優れている。しかし、浮上安定性にやや弱く、転覆などの恐れがある。その浮上特性上スポーツ用の小型艇に使用されている。
2はバッグスカート形式と呼ばれるものでいわば浮き袋みたいにいったん高圧空気を円環上のバッグの中に閉じ込めあふれた空気を浮上用に使うことで安定性に優れている。しかし、スカートが空気の詰まった円環状なので
柔軟性に乏しく、地形追随性にやや劣る。スカートそのものは大変製作しやすい。
3は両者の良いところをあわせたバッグフィンガー方式と呼ばれるものである。ベースにバッグ式の安定性を
確保し、下部の地形に追随する性能が求められるところにはフィンガー状のスカートが設けられてる。
両者の欠点を補う優れた形式のスカートである。
 現在、実用化され運行されているホバークラフトのほとんどはこのバッグフィンガー方式を採用している。
ホバーQは見てくれはバッグ方式に見えるが、本質的にはフィンガー方式だが、フィンガーが連続した円環状といった特殊な形態をとっている。これはおもちゃとしての合理的な作りやすさを優先し、構造的には大変シンプルである。本物のホバークラフトにはない構造を持っている。
 つまり2枚の楕円トラックドーナツ状の布を2枚重ねて、熱溶着すれば簡単にスカートが製作できるものである。
模型にはこの様なほんものの原理をそのまま応用し、かつ至極簡単な構成で原理を再現してしまう冥利がある。
ホバーQの構造を簡単に説明しよう。
バキューム成型のボディに一体のレインドロップ型キャノピーがのっていて、その中に電子基盤、リモコンIRセンサーがあり、透明の中に電子基盤が見えて、ハイテク感がある。その後ろに2枚ブレードの推進浮上プロペラが水平に取り付いていて、周りは導風ダクトで覆っている。ダクトの中は推進と浮上用の風を分けるスプリッターが
ある。その後ろには方向コントロールのラダーが2枚設置されている。2枚としたのは方向制御の効率を上げるためである。

このラダーを動かすのにはコイル式のサーボを使用している。このコイル式は”フレミングの法則”をそのまんま原理再現した形式でコイルに電流を正-逆に流し、コイルで発生する磁力により、中に入れた鉄芯を
振らせる方式である。レギュラーのデジタルプロポーショナル式と違って、動きの微妙な比例制御はできないが構造簡単で且つ、超軽量にできるメリットがある。

ホバーQのコントローラは四角い形をしていて、両手で握るスタイルで左指でスロットルを、右指でラダーを
左右にコントロールするタイプである。
コントローラーの下側のふたを開くと、充電用の端子が現れ、開いた蓋が充電パッドになり、一工夫している。



さて、実際に走行させてみよう。10から15分ほどで充電完了し、いよいよ走行だ!。
パワーコントロールレバーをゆっくり前におすと、キーンとモーターが回りだし、同時にスカートが膨らんで、
スックと船体が立ち上がる。このホバーする瞬間は、本物でも模型でもホーバーに生命が宿ったかのように感じ、わくわくする瞬間である、、、、、と同時に前進に移ってはしりだしたぞ!!!!。
走行はかなり、スムーズだが一度、舵をきるとあらら!!!!。たちまちサイドスリップし、とっさにカウンターあてるも、、ままならず!!、、また逆舵状態で船体が一回転し、そのままの状態で突進し、壁にぶつかった。
 Iさんの言うとうり、このホバーQはかなり直進させるだけでもむづかしいぞ!!。

まさに、サイドフォース0の状態だ。ドリフトの連続状態でそれに当て舵をするとさらに制御不能状態なってしまうが、、、それがこのホバーQの面白いところである。
筆者がいろいろな床で試してみたが、フローリングはOK, 畳は動きが鈍るが動く、カーペットはニードルパンチはOK、 ループパイルはNG、であった。
ホバークラフトならば、、陸上から水面まですいすい、、、というのが特徴!。
ならば水面ではどんな挙動不審な振る舞いみせるかが興味をひく。ホバーQの取説をみると水面では運行させないでくださいとある。
 ホバーQの底面をみると2つの電極のあるほかはまっ平らだ。 要はここに浮力体を取り付ければ水面でも浮くことになる。実物ホバークラフトでも水上で停止した場合のことに備えて最低限の浮力を持たせた安全設計になっている。そこでここにホバーQも自重につりあう発泡材をつけることにした。
下は発泡材、その下は底面に取り付けた状態だ。


床面におくと少し高くなるが、、圧力室とこの発泡材が作る形状で圧力室の形状が変わり、空気力学で言うところの縮流係数が高くなる効果があり、浮上効率があがることが期待できそうだ!。

さて、実際の水面ではどうか。
我がSkyex研究所の誇る”標準大気圧実験プール”で早速テストしてみることにした。
水面に浮かべてみる。 綿密な浮力計算の賜物あって、無事に浮いた!。

次にパワーレバーを入れてファンの回転数をあげてみる、、、キーンという心地よい音とともに
するっと簡単に浮いて走り出したではないか。問題なし!!!!。水面でも走るぞ!。


この実験による普通の床面より、浮上効率はよくなるようだ。
それは先ほどの浮力材と空気室の形成する形状が圧縮効果を高めることと
水面といういわば圧力を逃がさない密度境界のなかで空気圧縮効果が高まっていることが
推測できる。
 メーカーさんには この”ホバーQ”の楽しみを広げる意味でもこの浮力体セットをぜひオプションで
追加販売してほしいものである。
さて、次は”雪上実験”にも取り組みたくなってきたぞ!。
最近急に冷え込みがきつくなってきたので、年内にはこの”ホバーQの雪上実験”ができないかと
空を見上げている今日この頃である。

夢は尽きマジ、、、、、、。