航空力学アート”WRIGHT WING”

THE WRIGHT WING


プロフィール


skyex

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見果てぬ夢を形にするスドリームデザイナーIt is Sdream Designer in shape as for the faraway dream. :yoichi takahashi




これまでに手がけた数十機のラジコン模型飛行機を設計製作するなかでまず、直面するのが翼のリブ構造の構成と製作方法である。
リブの翼型は航空機の基本性能上、大変重要で、模型といえども少し形が変化しただけで、飛行性能に即影響してくることは
これまで設計し製作し、飛行させてきた長年の経験から体で本能的に体得した空力感覚であり
最近では翼の断面を見ただけでラジコン模型飛行機の飛び方が創造できるまでになった。

したがって、航空機製作マニアのあいだでは、”製作意欲の衰えないうちに一番大切な翼を作っておけ”
と言われるゆえんである。

 ライト兄弟の飛行機から現在のジャンボジェット機まで、その飛行を支える翼の本質的機能は変わっていない。
時代やテクノロジーが進化しても、環境変化による二酸化炭素含有量が増えようが、普遍的な大気密度の中で速度による動力学
的力でささえているのは今後もかわらないであろう。
普段日常的趣味の世界で何気なく、翼型に接していて、そのもの自体に”形”が ふと!綺麗だ!と感動するときがある。
なにやら、これが空気中を移動するときに揚力が発生し、、その水平分力が、、、
そんな理屈はどうであれ、翼型の綺麗さ!に感動!するときがある。
この世に存在する翼型はこれまでに開発されたのもは洋の東西を問わず、数千種類を越える種類が存在し、それぞれ座標軸で
きめられていて、性能表もあり、ほとんど開発競れ尽くしているほど存在する。

今から十数年前、とあるTV局の鳥人間コンテストに出場した。
とにかく、翼幅13mの人の乗るグライダーだから、それまで手がけたラジコン機とは
スケールが大きく異なり、大きな翼を支える基本的な力学構造をまずマスターし、実践の製作にどう生かすかがポイントであった。まずはリブ構造と製作にかかった。
リブはバルサに角材と板材をトラス構造にして翼型に組見上げた。
これは飛行機が初期の木製機の時代から作られてきた最も初歩的で基本的
な構造である。しかしながらその力学的な応力の伝達を効率よく支える理想的
な形態の一つである。
そのとき、グループの全員で分担して作ったリブは150枚近くになった。
それを集めて並べると綺麗なオブジェに変身し、感動を覚えた。もちろんそのときは
そんな感動にひたっている時間的余裕は無かった。
しばらくして、TV局が製作中の取材にやってきた。
撮影のライトに浮かびあがったフィルム張りの翼が綺麗に光に透けて見えた。これは何かに使えそうだと記憶にしまいこんだ。
下は鳥人間用の翼長13mの主翼の組み立て作業のショット
30人で延べ3ヶ月かかって仕上げた。

航空工学の専門家や技術者はこのリブ構造の綺麗さはわかっていても”アート”の道まではたどり着かないし、思いもつかない。
アーティストはこのような構造力学の路地裏にはめったに、入り込めないし、よほどの事がないと知らない世界である。
そこで、このような異次元の間を自由に行き来できる”メカニカルアート”を得意とする私が具現化できる”アート”があるとひらめいた。

空気という流体に磨かれ、進化してきた翼。
その流体力学的に無駄のない形は感動的でさえある。
その形態をスプルースの角材でスプライン曲線で翼型に曲げ、トラス構造に組み上げ、
翼の形にして和紙の外皮(SKIN)を張り込んだ。応力外皮構造の完成です。

その中に灯りを仕込んで見た。
普段は翼の中に閉じ込められて、裏方になっているトラス構造が外皮の和紙をかいして
浮かびあがり、構造美となって現れた。

航空工学と照明アートの融合したあたらしいオブジェ、
”THE WRIGHT WING”の誕生です。
自ら光を放ち、空に向かって羽ばたいていく、飛ぶと言う機能を持った翼型フォルムが
光の軽やかさと相まってその軽量に徹した独特の構造美が美しく映える。



*THE WRIGHT WINGは人類初の動力飛行を達成した”ライト兄弟”と灯りのライトを
かけて作った造語です。
下の画像は我が家の吹き抜けを滑空する”WRIGHT WING "



この”浮遊感”あふれる灯り造型美はかの”イサムノグチ”も発想外だったに違いない。

今後、この”WRIGHT WING”をシリーズ化して羽ばたいていくオブジェを”形”にしていきたいと考える。

*航空力学アートWright Wing 2
軽量構造の美学:航空機の構造は軽くて強い構造が求められる。
そこには昔からたくさんの航空技術者の知恵と工夫がなされている。
それはあるとき極限美を生み出すときがある。
ここに紹介する"肉抜き軽減孔”もまたしばし航空機に利用されている軽量化の方法である。このは航空機部品や内部構造にふんだんに用いられている。
*"肉抜き軽減孔”も構造力学的に設計要素が数値化されていて、隣り合う孔円のクロス
接線が45度より大きく取ることが定数となっている。これを破ると設計強度が極端に
よわくなり、強度を無視した、無理な軽量化となってしまい、安全上問題がおきる。
*この"肉抜き軽減孔”をモチーフにしてアートを考えた。
翼のリブ構造にもこの"肉抜き軽減孔”は用いられている。
翼の平均矢高曲線に沿って、前縁から後縁まで並ぶ複数の異なる直径の抜きは強度バランスと言うルールの上で見事なアートとなっている。